短編小説

短編小説

世界に蔓延る緑について➃

 僕は電気ポットでインスタントコーヒーをいれた。あっというまに部屋は半月ほど前まで働いていた職場のような雰囲気になった。僕は目を細めた。やはり、インスタントコーヒーだからといって、除け者にするのは良くない、と僕は思った。  座椅子に...
短編小説

世界に蔓延る緑について➂

 彼女は読み終わると感想を書いた紙を持ってきてくれた。大抵はノートの切れ端で短いセンテンスが鉛筆で書かれていた。 「ノーマンはとても苦しい思いで海を泳いだ」とか、「本棚に火をつける描写は魅力的だが、とても残酷だ」とか「母親は子供を叩...
短編小説

世界に蔓延る緑について➁

 感情についての考えをまとめていると、僕は中学校のときの、ひとりの女の子を思い出してしまう。彼女についての記憶はいつも優しいような恥ずかしいような気持ちを連れてくる。僕が間違えて欲しくないのは常に記憶が先にあって、そのあとに感情がやってく...
短編小説

世界に蔓延る緑について➀

 朝、鳥の鳴き声が聞こえたとき、僕はパソコンの前に座って自分の総体についての考えを巡らせていた。冷気が靄のように漂い、朝日を新品のように演出していた。僕は冷え切った珈琲を啜り、窓の外を見上げながら 外側の世界からやってくる音を聞いていた。...
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変わった癖を持った少女

 少女には幼いころからちょっとおかしな癖がありました。両親はそれを心配していましたが、それ以外のことはなんら他の子供と変わらず、その癖も小さい子供にはよくありそうなことなので、また少女の両親も二人とも働いていてなにかと忙しい日々を過ごして...
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線路上の蝸牛

 わたしは幼いころ線路の蝸牛を上手く見つけることができた。蝸牛は線路の近くならどこでも現れた。いくつも茶色い石が転がっていて、苔の生えた石との狭間に蝸牛はよくいた。わたしはそれを動物園の猿でも見るような気持ちで見つめ、蝸牛の方もなんでもな...
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ハローマイライフ

 その日は朝からなにもかもがおかしかった。夜はなんだかにやにやして眠れなかったし、食欲がなくてお母さんが作ってくれた出来立てのスクランブルエッグも残してしまう始末。こんなことは生まれて初めてのことだ。おかげで私はげっそりとした状態で家を出...
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